朝晩こそ上着なしでは寒いほどの気温となりつつあるが、
昼間ひなかはまだまだ日向にいれば汗ばむ陽気。
シルバーウィークだとお出掛けの方々は
寒くても蒸してもかなわぬと、
着るものの調整に頭を悩ませておいでに違いなく。
これもまた、秋の気配がどんどんやって来つつある証のようなもの。
「だからって気が早くはねぇかなぁ。」
日本だけの現象か、ここ最近何でもかんでも前倒しという感が強いような気がすると、
特に怒ってるわけでもなかろうが、それでも十分すごみがある三白眼をややしかめ、
我らが“フリル・ド・リザード”の主将様がぼそりと口にしたのが先の一言で。
それへと続いたのが、
「ハロウィンが8月後半から取り沙汰されてんのは、
盆とか有名パークのホラーものの延長ってやつなんだろうが。」
「何だなんだ、ルイ」
「妙に鋭いじゃねぇか。」
既に始まっている秋の星取リーグ戦。
上のリーグを目指すからには、
入れ替え戦への権利、つまりは首位での〆めを目標に、
毎週末の公式戦へと、体調やシフト連携の調整に日々励んでおいでの面々なれど。
そんな練習の狭間、インターバルともなれば、
手近にあった雑誌やら、はたまたデータを入力中のPCの
別窓に開いていたページのバナーなどなどへも、
ついつい注意が逸れもして。
「お歳暮の宣伝でも出ていたか。」
「いやいやさすがにそれは早かろう。」
まずはクリスマスケーキの予約とか?
ケーキは知らんが、コス○コなんぞじゃあツリーやアイテムが早々並ぶっていうぜ
おお、さすがはアメリカってか?
つか、卸業者の間で取り沙汰されてる今年のトレンドものを早めに出すんだと
で、早く買っておかないと在庫が無くなり次第 店頭からも消えるってんで、
実は特に要りようでもない奴ほど妙に焦って買っちまうとかどうとか…などなど、
アメフトからは多きに逸脱した話へ脱線しておれば、
「おせちの予約だぁ?」
そこへと引っ掛かったらしいというお答えが
低められたいいお声で漏れ聞こえ。
それへ、わお…と居合わせた皆がついつい言葉を失くしたのは、
確かにそりゃ早いわと呆れたか、
何でそれへ葉柱さんが眉間にしわ寄せてんだろかと
別口の疑問がわいたのか…
そんな周囲だなんて気づきもしないまま、
「大体、日本人なら秋の行事といやお彼岸か秋祭りか、
えっと…そうそう、七五三だろうが。」
自分でも例えばがなかなか思いつけなんだか、
えっとという間合いを挟んで紡いだ一言だったのへ、
「その七五三も結構な前倒しだぞ。」
そんな風に口を挟んできたのが、
「おう、遅かった…なぁ。」
「文句なら桜庭に言ってくれ。」
そのままにこぉっと笑えば完璧なキュートボーイ、
七分丈のサロペットに背中へおろした大きめなフードが可愛いパーカー、
ボーダー柄もお元気なハイソックスという、
いかにも可愛いいでたちをした小さな鬼軍曹様。
アイドルボウラーのお名前が出た辺り、
彼のイケメン様の来年度のカレンダー用スチールに
またもや撮りこぼしがあったらしく。
けぶるような金髪にちょこりと載っていた帆布製のキャップ帽を脱ぐと、
つばのところで暑い暑いとお顔を仰いで見せながら、
遅刻の言い訳のもちょっと先の一言へと付け足したのが、
「何たって、ひな祭りや子供の日の記念写真は言うに及ばず、
初詣の写真からして
七五三とワンセット予約ってパックになってるのがざらだかんな。」
もしかしなくとも、
お子様の記念日に可愛らしいお写真をと、
ご両親やジジババ、もとえ祖父祖母様がたからの
あまりある溺愛を一身に集めているキッズ対象、
貸衣装つき写真スタジオの晴れ着戦略の話らしく。
「初詣って…。」
十一月の行事である七五三から数えると、
もしかして一番の前倒しかもしれないワケで。
……で。
どうせなら真夏の恰好のが撮りこぼされてりゃよかったのによと、
中途半端に着込んでいるのが暑くてたまらぬらしい
見かけやお歳によらず、
色々精通しておいでの小さなキッズモデル殿へ、
「もしかしてお前、そういうのも…。」
桜庭くんのファン向けグッズ、
写真集だのカレンダーだのへちゃっかり映り込んで
お若いファンのお姉さまたちから“可愛いvv”とウケてるアルバイトは
葉柱も当然知っていたれど。
まさか他でも露出していようとは、と
少々意外そうに、恐る恐る訊いたれば。
「最近はさすがに忙しいからやってねぇけどな。」
ウチの近所の駅前商店街にあるカメラ屋とか、
あと、あ・そうだ、
Q街の家電ショップのデジカメコーナーにかかってるのも
俺と瀬那坊だしよ、と。
訊いてないことまでご披露くださり、
「…ほ、ほほぉ、そうなんかい。」
何かなんてのか何でこうも複雑な気分になるのかなぁと、
声が低くなった総長さんへ、
「何だよ、随分前のだから今の俺らだって判る奴は…」
そうそういねぇってばよと、
妙なところで自覚が薄かった小悪魔坊や。
同じころ、その家電ショップにて、
問題のパネル写真を無言で見据えること数十分。
「…あ、あの。」
デジカメ部門のチーフさんに
よろしかったら差し上げますと言わせてしまい、
スチール写真を下げさせた剛の者がいたなんてことは、
きっと届かなかったに違いない秋の空だった。
〜Fine〜 15.09.20.
*妙な話ですいません。(笑)
もうおせち?とびっくりしたもんで つい。
そして、家電ショップの写真はというと、
きっと瀬那くんと一緒に
何代目(何台目?)かのガラケーを買いに来た大魔神様が、
あれって僕とヒル魔くんなんだよって、
坊や本人から言われて見惚れてしまったものと思われます。
めーるふぉーむvv 
or *

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